2011.11.26 Saturday
北京都ぐるり林道ドライブ
いよいよ来週は「師走」。もう何度も書いてすみませんが、ホントに今年は速いっ。ニュートリノより速い!?でも季節は少々遅れてやって来ているこの十数年、関西の紅葉もようやく見頃を迎えました。週末の京都や奈良はごった返し必至ですですから、平日に紅葉狩りと。
と言っても有名なスポットや寺社仏閣には出かけません。平日と言えども車で行くと目的地に到着しない、駐車場が無い、その周辺から帰れない・・・エライ目に遭いますからね、この季節は。ということでワタシにとって雲の上の職人さん、クサノさんと林道ドライブに出かけました。今までも結構一人で当ても無く林道のWRCを楽しんでいるのですが、大先輩もそんな道が大好きというコトが発覚!しかもワタシよりはるかにそんな道をインプットされてまして。仕事もスゴイのですがあらゆる知識の泉、まさに「歩く大辞典」な方、な、もんですから脳内地図もハンパ無い訳で・・・。ワタシはドライバーに徹して、さぁ、いざ行かん!
まずは腹ごしらえ。ちょっと早めの昼ごはんでしたが亀岡の山奥深いところにある蕎麦屋でざるそばを頂きました、そう、新蕎麦です。今秋一番の冷え込みに加え山奥とあってそりゃ寒い訳です、だから暖かいお汁の蕎麦を注文しようとしたら「新蕎麦ですから是非ざるで!」って言われたもんで「ざるそば」です。二八だと思いますがのどごしスルリ、細麺なのにコシがシャッキリ、蕎麦湯も旨い訳です、ごちそうさま。
で、向かうは「保津峡」。ですが冒頭述べました通り一般道など走りません、山道です。それも対向車が来たらどちらかが待避所まで下がらなければならない、北山杉の林道、ワタクシの大好物。今回ばかりは天気も良くナビゲーター付でしたのでそれはそれは快適にクルマをブッ飛ばして、ライコネンかソルベルグか。と、そうこうしているうちに高尾山のお寺(?)近くに出てきまして、でも相変わらずの細道。なのにやはりスポットなのでクルマが多くなり・・・対向してきたクルマの運転手がオバチャン、自分のクルマを上手に左一杯まで寄せられません。それでもワタシの方はミラーを畳めば前に出れると思い少し上り勾配を半クラッチで出るや「ガコッ!!!」。あいやぁ〜、はまったか!?後ろは宅配のトラックが迫り、チョイ焦るもリバースでタイヤが噛んでくれまして脱出。「フッ〜ぅ」。まぁ側溝では無くその蓋が傾いただけだったようで車のダメージも無し。
そして、どんどん北上。もうワタシは何処かわかりませんが、ある集落の「大銀杏」が眼に留まり。ココも変わらず対向出来ないので少し手前にクルマを止めてシャッターを切りまして。樹齢何年でしょうか?幹回りは人3人ぐらいで手が届くか?高さも20mは超えていたであろうその老木は見事な黄色。おそらくすでに半分ほど散ってしまっているであろう路面は綺麗な黄金の絨毯、御堂筋の銀杏ではこうは染まりません。ぎんなんの匂いもハンパ無かったですけど・・・。
と、走り続けて「美山・かやぶきのさと」まで来てしまいました。まだ午後3時を過ぎた頃だというのにお日様は西の山の稜線に差し掛かりつつあり、夕方の雰囲気。おまけに気温5度、寒いっ。大阪の平地での真冬の最高気温並み。でもココはスポット、ということでやはり観光客が押し寄せており。
一度来てみたかった「美山」。まるで日本昔話を地で行くような集落はさほど広くは無いのですが桧皮と茅葺の屋根などそのままを残し、十数軒の建物の保存に努めているようでした。実はワタシもこんなトコロに住みたい、なんて野望(?)というか夢ですか?いつか叶うと良いのですが・・・(笑)。
と、この写真が今回のドライブでの撮影のベストショット。植林された人工的な間隔の北山杉の合間を縫って落葉樹が夕日に照らされて・・・なんともいえない美しさ。
しかし、大阪から100km以上離れた林道に夕刻にいると日が落ちる前に脱出しておかないとそれこそ真っ暗なガードレールの無い道を彷徨うコトに。薄暗いダウンヒルをハイビームとフォグランプで照らしながら帰宅の途に就いた、今回のドライブでした。やはり日本の四季は儚くうつろうけれども毎年繰り返されるその自然の体内時計による完璧なスケジュールのダイナミクスは脅威であり畏怖の念を抱かずには居られない、だからこそ美しいと思わせてくれるサイクルなのだと。無常にして輪廻する・・・この感覚は諸外国の人々も同じように感じるのでありましょうか?
とにもかくにも本年のドライブはこれにて終了。来週からはこれまた仕事も個人的な予定もてんこ盛りです!辛い出来事の多かった2011年をワタクシなりにきっちり締めくくらなくては・・・。
2011.11.23 Wednesday
Roman Coin Pendant 完成
本日「勤労感謝の日」。言わずもがな祝祭日のひとつですが、「わーぁい、仕事休みぃ、何して遊ぼ?」では無く、「勤労をたっとび、 生産を祝い、国民たがいに感謝しあう」日だそうで。どっちゃにしてもワタシは仕事な訳で・・・今日もオツトメでございました。が、相変わらず世界中の経済が滞っており失業率も上がり、就職内定率は下がり、物価はさほど下がらず給料上がらず。旗揚げゲームじゃないですが、ワタシどもの仕事なんぞこの不景気に生活するうえで真っ先に切り捨てられるモンで・・・それでも何とかお仕事頂けるコト、仕事が出来るコトは有り難い訳で。有史以来、装飾品の類は人を魅了し続けたのですから完全にこの世から無くなるコトは無いでしょうが、厳しいご時世でありまするな。と言いつつ今さらネクタイしめて仕事なんてワタシゃぁ無理(笑)。
この時代の経済はどうだったんでしょうね、ローマ時代?以前の記事で紹介したローマコインのペンダントがお客様の元に届きましたようですのでアップいたします。枠はシルバーのシンプルなデザインです。ただ、コイン枠というと裏側はコインを留めるための爪が上下左右に4本付いているモノが一般的。そうなるとリバーシブルでは使えないし、見た目にもチープだし。なので表も裏も同じように枠を付けました。2パーツになっていて一方はコイン厚み分のマチが付いたものに4か所ピンを立てたもの、もう一方は平座金に4か所ピン穴を開けたもの。そう、コインを入れて蓋をしてピンをかしめて留めました。この時どうしてもマチ部分に一筋見えてしまって、いかにも蓋しましたって感じになるのでその厚み分に両サイド「ミル打ち」(和名なら「魚々子(ななこ)」)してその間には月桂樹の葉を彫りました。
こうすると合わせた感じがあまりしないので「オッケー!」とか思ってたら、肝心のコインが裏と表で上下が180度違うじゃん・・・、ということはリバーシにしたら画が真っ逆さま、ほへーっ。まぁ、こういう詰めの甘いトコロがワタシなんだなぁ。と、自分を受け入れつつ反省しつつ、「まぁ、いいか」なんて、どこまでも自分に甘いワタシ。仕事の手は抜いてませんのでお許しを。
物々交換の時代からその対価として通貨という道具が発生して早何年?近年ではカードやケータイで「ピッ」とかするだけでモノが買える時代。ちょっと前のワタシも「現金主義」でしたが、世の中の便利なモノを一遍でも使って味をしめると不可逆ですね。そう、最近ワタクシ、買い物が過ぎております、自重せねば。働いて頂いた分で身の丈に合った生活をいたしませう、ってナニ書いてるんだか・・・ねぇ。
2011.11.20 Sunday
フクシア・ペンダント 12
久しぶりに土砂降りの週末、ホントにようさん降りました。庭の抱えるほどある大きな壺には八分目ぐらいまで雨水が溜まって、もう動かせません(金魚を飼っている訳でも水生植物を育てているでも無く・・・そこに置いてあるだけ。しいて言えば庭の水まきに溜めてるような)。色とりどりの桜の落ち葉がこの雨で庭中に散らばって綺麗です、がお隣に迷惑にならないうちに掃き集めないと、です。この後はもみじの落葉、これが大変、お掃除がね。
そして本日11月20日をもちまして彫金生活満16年、明日より17年目に入ります。職歴40年選手なんてざらにいらっしゃいますからワタシなんぞまだまだヒヨッコでございますが、長かったようなあっという間のような、そんな16年間でありました。その中でも今年ほど環境や自分の仕事のスタイルが激変したのは初めてです。半独立状態(?)での仕事になって個人の仕事や教室の開設などぼちぼちですが、1年目にしてはまあ進んだんじゃないかと・・・ひとえにお客様をはじめ友人や先輩後輩職人さんの支えや協力があっての現状であることに感謝せねばなりません。はじめてお会いする方、旧知の友人との再会、遠方の知人との連絡のやりとりなどなど、ワタシの周りが一気に動いたような、そんな本年11か月でした。11月も残すは10日、あれもこれもしなくてはならないコトだらけでどれから手を付けたらよいのやらワカラナイまま、とりあえず眼の前のコトから順番に片付けて本年の締めくくりが出来たら、と思いつつ「フクシア・・・」再開です。
まぁ、リフォーム・オーダー・お修理と何かと入っておりますので、また何時止まるか知れません。とりあえず、とりあえずちょっとずつ進めていきますね。で、相も変わらずギミック部分ですが、結局全部作り直しておりまして今回こそちりあわせは上手いコトいきました。
可動部のLアングルを納まる受け側に合わせて一体モノでツクってそのまま花弁とロー付しました。これを切り離してセンターパイプとの接点を調整中です。しかしこれはそもそも構造上の欠点が今さらながらに見え見えです。いわゆるシーソーの原理というか「テコ」の部分の設計ミスです。モチーフの花の形状や他パーツとのからみによる寸法上の制限でやむを得ないのですが、「支点・力点・作用点」のバランスが悪いんですよ、当たり前ですね。いくら花弁を軽くツクったと言えども支点から力点までの距離があまりにも近すぎてスムーズに動かない・・・。もうコレは花の形状からくる寸法上仕方が無い、のでこの現状はこのままに上下に動かす方で工夫をしたいと秘策はあります、が上手くいくかはワカリマセン・・・(笑)。
でも、パーツ同士の組み付けは4本のネジ留で事なきを得ましたので次へ進めます。年内の完成はもう断念です。あわてずしっかり作り込んで完成を見るコトを念頭に。ですが、来年は「辰年」、自分では気が付かなかったのですが次作品はコレにちなんでおりまして、どぉしてもそれに早くかかりたい、そんな気ばかり焦っているワタシな訳で・・・訳で・・・。
2011.11.16 Wednesday
Brooch for composer 完成
今週は少しずつカレンダー通りの晩秋の寒さがある大阪。週末は雨模様なので気温はまた上がりそうですが、ひと雨毎に季節は冬に向かっていくことでしょう。ワタシの一番大好きな季節「晩秋」。真冬のような着膨れも無く色んな服を重ねて楽しめるし(って最近はめっきり「お洒落」から遠ざかっていますが)、紅や黄の燃えるような葉の落ちた木々はそれはそれでまた美しく、ちょっとしんみり、淋しい雰囲気が何故か心地良かったり。朝晩の冷え込みが上手に紅葉をツクってくれるコトを心待ちにしている今日この頃のワタシでございます。
さて、「Brooch for composer」完成です。前回、パーツ完成までご紹介いたしましたが、その時点ではト音記号はWGの五線譜の上に直ロー付の音符は丸カンのブラの予定でした。そうなると五線譜のロジウムメッキ処理が大変手間の掛かることになってしまう(メッキをかけたくない部分をマスキング処理後にメッキ、その後マスキングはがし、と)、また立体感に欠けるようで組み立てに躊躇しており・・・。メッキ処理しなくても良いと言えば良いのですがイエローとホワイトのコントラストにメリハリが出ない。ブラの音符も土台に当たって傷だらけになりそう。
で、ちょっとひと工夫。ト音記号は五線譜との間をわずかに持たせて手前に出るように極小の丸カンの下駄を履かせ音符も同じように下駄で底上げして、それぞれのパーツに芯を立ててト音記号のそれはロジウムメッキ処理後の五線譜に裏からかしめて留め、音符のそれは左右に揺れるようにかしめてみました(リベットのように動かないようにピンを叩いて留めることを「かしめる」、ピンは抜けないけど動く状態で留めることを「からくる」といいます、って一級の試験の時覚えた?)。
結果大成功!!!メッキの処理も単純にドブ漬けで済みましたし、揺れる音符で傷がつくことも無く、尚且つのっぺりせずにボリュームを出せたかと。ロー付のみならずパーツどうしのかしめやネジ留も効果的に使うと作業も短縮できるし仕上がりも良いときたらコレ一石二鳥!納品後、お客様が着けてくださったところ早くもバックオーダーを頂戴いたしました、感謝感謝!手作りですのでまたイチからツクル訳ですが、一度ツクったモノは手順が解っているだけに早く出来そう。全く同じものには成りませぬが・・・(笑)。
このブログでは紹介していないリフォームもののお客様より先日御礼のお手紙を頂戴いたしました。達筆なその文面には「長い間使わなかったものが綺麗に生まれ変わってとてもうれしくおもっています」と。このようなお手紙は久しぶりで、「モノをツクってて良かったぁ」と改めて思いまた、今後の製作の大いなる活力剤になりました。こちらこそ御礼を再び「アリガトウゴザイマシタ」と。
さぁ、「フクシア・・・」もそろそろ記事アップいたしまするが、何かと気忙しくなる師走を眼の前に来週はちょっとプライベートであることに挑戦でございます。さて何が出るかはお楽しみに。あっ、紅葉の写真撮影にも行ってきま〜す♪
2011.11.12 Saturday
Brooch for composer 1
11月も中旬、まだ衣替えもせずに過ごせる今年は朝晩の冷え込みも緩く、落葉樹の色づきも遅れるばかりか色そのものも悪くなってしまいそうです。一人で仕事をしている分には必要の無い扇風機も彫金教室の生徒さんが来て狭い工房に3人となると、そのしまい時が未だありません。来週末頃は寒波がやってきていっきに冷え込むようですが、これはこれで体調がその変化についていけず風邪なんかひいちゃいそうです、皆さん気を付けましょうね。
さて、無類の「クルマ」と「音楽」好きのワタシですが、今マイヘビーローテーションは「土岐麻子」とその前身バンドの「cymbals」。土岐麻子さんはその澄みきった声質と細かいビブラート、そしてどんなジャンルも歌いこなせる懐の深いリズム感、その上にキャッチーなメロディーは数年前から聴いてはいましたが、バンド時代の「cymbals」を掘り起こして(当時バンドの存在は知っていたのですが聴いたことがなかった)みると、歌い方こそ違うがほんの少しハスキーな声と超メロディアスなベースに手数の多いドラムがなんとかっちょええコト!ありきたりな言い回しですが「疾走感」バリバリ全開です!こんな上質なバンドがそれほど売れなかったとは不思議ですが・・・。
またまた脱線しておりますが、今回のオーダーは「作曲家」の方。ある筋(どの筋?)の方からのご紹介でお仕事頂きました。スタンドカラーのジャケットに着けたいとのご要望で小振りな「ピンズ」タイプに仕上げました。今回は各パーツの完成までご紹介いたします。
材料はK18YG/WGのコンビにダイヤ・サファイア・ルビーの3カラーストーンです。まず、土台はWGで五線譜をくるりと最大外径19mmの輪っかにいたしました。普通に楽譜のように真っ直ぐな感じのブローチはありがちなのと、丸くすることでCDやレコードのイメージと音楽の持つ世界共通語のようなモノを表現できたらなぁと、あとはピンズというサイズ制約の為に(何だか説明しちゃうとこじつけっぽいですが・・・笑)。これに「腰」を付けてあります。
その上に乗っかる「ト音記号」と「音符」はYGで製作、ト音記号は細長く伸ばした板材をヤットコを使ってクルっと一筆書きで巻きました。音符の石座はパイプ状の材料をクラウン状にすり出したいわゆる「アサガオ」座です。と、キャッチに挟むピンと服に着けた時に回転しないようにする為の極小ピン、これで全部のパーツが完成。あとはどのようにそれぞれを配置していくか、これで印象が変わりますので慎重に。次回はいきなり「完成」の巻でご紹介です。
ホントに今年がもう残りわずか。さして忙しくも無いですが、年末に向けて何かと気忙しくなってくる頃だというのにワタシ、だいぶのんびりモードでございまする。明日は峠を攻めましょうか?新しいタイヤを履いた愛車の何と調子の良いコト、ついついアクセル全開、燃費悪くなるよぉ・・・。
2011.11.09 Wednesday
正倉院展@奈良
今朝は久しぶりに7時前に起床(って、怒られちゃいそうですが)、8時前には車検上がりの愛車に乗り込んで行くは「奈良国立博物館」、正倉院展に。一度見てみたかったと思いつつ毎年のニュースで見聞きする人の混雑とそれに伴う渋滞にいささか足が向かず・・・。意を決しての朝一攻撃!奈良は実はあまり行った記憶が無く、今回が3回目ぐらい?大阪から遠いイメージもあったのですが実際高速を乗り継いで平日の朝ならば50分強の時間的距離、意外や近い。奈良国立博物館前までは渋滞も無くすんなり到着。
が、近辺の駐車場が解らずキョロキョロすると正倉院展入口前にはすでに行列が!?少しばかり離れた春日大社の駐車場から気持ち冷えた奈良の心地良い空気を吸いながら歩いて10分、行列を眼の前に「入場待ち30分」の看板が。並んで何かを待つのが苦手なワタシ、テーマパークも食事も行けないワタシが並びました!って大袈裟には言ってませんよ、ホントに。しかし実際はそれほどの待ち時間では無かったようにスムーズに館内にIN!
実はココからがエラかった。見学する人が陳列ケースの前で立ち止まってじっくり見入るもんだから進まない。やはり待っていられない人たちはケースに張り付く人の後ろから見て回り・・・いや、ワタシはちゃんと並んで最前列で見たかったので並びました。1300年前の古の達人による作品と呼んでよいと思われる宝物。よくぞこんなに状態良好で現存しているモノだなぁ、と変な感心を。絹の香袋や袈裟はその経年を感じさせないほど色褪せも少なく美しくそれらを納める革に漆仕上げの箱物、供物を載せるための猫脚付きの木製小盆は今の時代にもその意匠が通用する繊細で鮮やかなものだと。相変わらずの歴史音痴ですので詳しくはワカリマセン(泣)。時代ぐらい!?
でも、進むにつれて金属製の器や鏡など、やはり興味深いモノは作り手の見方になってしまい、覗き込んではガラスケースにおでこをぶつける始末。どんな道具で作ったのか、どんな段取りで作り進めたのか、その職人になったつもりで細部を見ておりました、と、出口に。点数的に少し物足りなさとあまりの見学者の多さにじっくり見れず初めての正倉院展を後に。その後、東大寺・二月堂・唐招提寺へと。
東大寺も何年ぶりでしょうか?初秋のそこには一般の観光客と修学旅行の学生さんたちでこれまた結構な人の数、もっと静かに堪能したいのだけれどこの時期はしょうがないかぁ。アチコチで耳にする学生さんの一言は「わっ、ビックリした、鹿いるぞ!」って、そりゃ奈良ですから・・・。で、奈良の大仏さんにお久しぶりのご挨拶をいたしまして、いやはや、やはり大きいですなぁ、大仏だけに(笑、当たり前か)。大仏大仏と言いますがその正式名称は「盧舎那仏」。おまけに座っていらっしゃるので「盧舎那仏坐像」。某国営放送で大仏建立をドラマ化したものを見ていたので何となく歴史的背景も解って、にわかに嬉しかったワタシ。
で、大仏さんの背後におわしますは「広目天」と「多聞天」、いずれも5m程の立像。「広目天」は西方を護る守護神で字のごとく遠くを見渡す「千里眼」を持つと解釈され、他方「多聞天」は一般的に「毘沙門天」と呼ばれる東方を護る武神だそうです。
いずれにしても迫力と威厳とがその美しい彫刻から感じ取れる四天王のうち二体。以外にもこれらは江戸時代の復興期に造られたもののようです。
今回は雨にやられること無く、久々によく歩きました。で、カラーでも撮影したのですがなんだかモノクロが最近は好きなようで、光の陰影がもたらす奥行感や立体感はカラーに勝るような気がします。が、その分露出に気を使わないとならないのでムズカシイですね。
紅葉はまだの奈良でしたが、お寺巡りの楽しみの一つ「御朱印」もしっかり頂戴いたしました平日のドライブでした。クルマが超調子良いですし来週も出かけるかな。
2011.11.08 Tuesday
Simple Round Ring
本日は暦通りの肌寒さの「立冬」。日中のお日様もだんだんと柔らかく空の青はどこまでも突き抜けているようで。関西の紅葉はやっぱりまだ先のようですが来週頃は一度峠に攻めがてら色づきを期待して、今日11年目の車検でまたもや足回りや劣化(というより「風化」?)した様々なパーツを交換したお金のかかる愛車を駆ってドライブにでも。
さて、日曜日は先輩職人さんのウチボリさんのお弟子さん「ガッキーさん」の技能検定一級合格祝いを、遅ればせながらワタシの拙い手料理でワイワイガヤガヤと日付が変わるまで楽しみました。食べて飲んで(お茶)喋って・・・クタビレテ(笑)。そしてそして、ようやく個人オーダー分がとりあえず一段落いたしまして、これからお客様への発送を残すのみとなり、さぁこれから作品製作に戻りたいと思います。が、まだ何点かお仕事が頂けるかも。嬉しいですが作品の方が・・・うぅぅっ。で、ひとつずつご紹介。
とってもシンプルな2連リングです。K18YGに0.3ctのダイヤモンドのリングとプラチナのリング。材料は全て丸線。もちろん仕事自体は何時間という短時間で終了ですが、装飾の無い、もしくは非常に少ないモノは逆に難しかったりいたしまして・・・。どういってもラインが命になってきますから1ピースのシャトン(石座)とルースのセットはコレはコレで気を遣う訳です。わずかにずれても傾いてもめちゃくちゃ目立ってしまいますから。
仕上げも、実は厄介だったりします。仕上げの面が少しでも凹んだりすればこれまた非常に目立つんです。だから料理と同じでシンプルなモノほどしっかり取り組まないと誤魔化しの効くトコロが無いのでムズカシイ(泣)。やっつけちゃえばそれまでですが、この基本が出来ると出来ないでは込んだデザインモノでもそれなりの結果と成り得るんですね。ベーシックは徹底的に腕に叩き込んで、尚且ついつも同じコンディションをキープしないとあっという間に手が怠けます。
大リーガー「イチロー」が毎日同じメニューをこなして、それでも有り得る日々のわずかな体や心の変化との微調整が出来て初めて後の結果に繋がるコトは、モノヅクリの現場においても特に職人と呼ばれるプロフェッショナルにも共通なのではないかと。「会心の作」などほぼありません、ひとつふたつぐらい?だから常に高い次元でのキープアベレージが職人であれば求められる一番大きな要素だと、ワタシは思って日々鍛錬に勤しんで・・・なんてなかなか大変だよね、思ってはいても怠けちゃう時もありますよぉ、過剰なストイックはストマックに良くない!?
2011.11.03 Thursday
修理モノ「サイズ直し」編
有無を言わさず時は一方向へ同じスピードで進んでもう11月も3日目の「文化の日」。もうすぐそこに2012年が見えそうなこの季節に最高気温25度超えの夏日、って!?ちょっと張り切ってお掃除でもしようものなら汗かいちゃいますよ、この気温は。11月のカレンダーと半袖のワタシ、衣替えは一体何時やるんでしょう?年末かい?
さて、リフォームや一品モノも着々とワタシの手を離れ、現状ラストの手作りを残すのみ。ようやく「フクシア・・・」に掛かれるか?お客様の手元に届き次第アップできるモノをご報告するとして、本日は「ひょっとして手作りよりムズカシイ」だろう「修理モノ」の中でも「リングのサイズ直し」の工程なんぞ紹介してみまする。↑はサイズ直し・新品仕上げ完了のリング。
今回はK18YGリングの9号から12号サイズアップの方法です。デザイン・構造・石の留め方・石の種類などなど・・・様々な条件でどのように「直す」かは、モノを見て経験から判断しながらミスの無いよう取り掛かります(ってか考える前に手が始めてますが・・・)。サイズを大きくするなら1か所、小さくするならその切り落とす分の2か所に糸鋸を入れて切断です。その際全くの新品で無い限り先ずリングの下側(写真の糸鋸が当たっている部分、時計の文字盤になぞらえて「6時」と言います)にトーチで熱を入れます。過去にサイズ直しがされていれば切って繋いだ部分の「ロー目」が出てきます。ロー目が出ればその部分を切断。
切断後、芯金(ごく緩いテーパーの付いた金属の棒)に通して直す号数まで切断したリングを開いていきます(これもリングの状態によってはヤットコを使ったり)。開いたリングの腕に地金を足します。直しのサイズが大きい場合は足し地金に上がりサイズでアールを付けておきます。
そして足し地金と腕をロー付します。地金に火を入れるということは強制的に「酸化」させていることで酸化した部分にはロー材は上手く流れません。ですので酸化を防ぐ「フラックス」(または硼砂を水で溶いたペースト)を少量塗り付け、その上に適量のロー材を置き母材の地金を溶かさないようロー材だけを溶かして毛細管現象で隙間に流れ込んでいくように、トーチの火の大きさ・酸素の量・当てる角度・距離など微調整をしながら慎重に作業します(といってもほんの数秒です)。ロー材は出来るだけ溶ける温度の高いモノ=「渋い」ロー材を使います。これは母材の熔解温度に近ければロー目が見えにくい(見えないようにするのがベスト)色味になる為です。また石の留まっているモノは熱でダメージを受けないようにティッシュペーパーを巻いて水を含ませ保護します。切断前のロー目出しの熱入れも同じくです。
ロー付後希硫酸でフラックスと酸化した地金を「酸洗い」処理したリング。この際も酸に極めて弱い石などは希硫酸に付かないよう熱を入れた部分のみ酸洗いします。
荒目のヤスリで荒取りした後再び芯金に入れて真円を出しつつサイズの微調整をします。その後細目のヤスリで元のデザインになるよう成形していきます。
リューターでペーパーポイントやシリコンポイントなどでヤスリ目を消して滑らかに仕上げていきます。これも面倒ですが番手を少しずつあげて作業を繰り返します。
最後にバフがけをしてこの場合は鏡面のポリッシュ仕上げ。彫り物や艶消しマット仕上げの場合はそのテクスチャー処理も必要です。超音波洗浄機にてバフかすをきれいに落としてサイズ直し終了、と、ここまで10〜20分の作業。修行時代は1日に50〜100本のサイズ直しを延々と繰り返し・・・。数多くの失敗も後の自分の引き出しです。やっぱりお直しはムズカシイし大変です。
ワタシ達の時代はバブル崩壊後ではあったものの仕事はたくさんあって上手いも下手もとりあえずこなさなければ明日の仕事がこなせない、そんな時代で今となっては完全に肥やしです。が、今、修行の身にある方々は手に覚えさせられるほどの仕事が無いのが現状。腕を上げるにも上げるだけの材料が乏しいのは残念なコトですし、後々の仕事にどのように影響するかは厳しくも思う環境ですね。「苦労は買ってでもしろ」とは言ったもので、その渦中は逃げ出したくなるような日々の連続も後の成長になると。しかしながら日本のみならず世界中であらゆる産業がその憂き目にあっている昨今、宝飾業界はその最たるもののひとつであることは間違いなく、今後優秀な作り手や職人が減っていってしまうのはどうしようもないのかもしれません。ワタシ一人が何かをしようとてそれはあまりにも小さすぎる、けれどもコツコツと積み重ねながら、ツクル楽しさを広めもしたいし、余力と財力が許せば後進の育成も考えなければならない、そんな中堅職人に差し掛かりつつ。自分のこともままなりませんがね・・・。
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